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環境省の萌えキャラ炎上、何が問題なのかージャーナリストが解説 今日のニュース

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環境省のPRキャラクター「君野イマ・ミライ」 環境省のツイッターより

 環境省の「萌えキャラ」を使ったPRがツイッター上で批判を浴び、「炎上」状態だ。 これはより環境に優しいライフスタイルや消費活動を促す「COOL CHOICE」の一環で、電気の無駄使い等をしがちな君野イマに対し、君野ミライが省エネ等を諭すというストーリーでアニメ動画などのコンテンツが、環境省のウェブサイト上に公開されている。君野イマ・ミライによる環境省のPR自体は2017年から行っているものの、先日、環境省のツイッターでの投稿で君野イマ・ミライを紹介したことから、ツイッター上で物議をかもすこととなった。「税金の無駄」「なぜ女子高生のキャラをわざわざ使うのか」等の批判が大半なのだが、そもそも君野イマ・ミライのコンセプト自体が完全に間違っているのである。

 

 

 君野イマ・ミライについては、税金の無駄という声の他、主にジェンダー(男らしさ、女らしさといった、社会的・文化的につくられた性差)の視点から批判する声がいくつも上がった。

”ぐうたらで節約やエコに興味がなくて環境汚染を進めてきたのは女子高生やなくて大人やんね。それを改善「しない」決定権を持っていたのは今のオッサンとジイサンだよね。女子高生に押し付けんな”

https://twitter.com/shisoyama/status/1296936033930493952

 

“「ぐうたらで不摂生な女子高生が節約やエコに興味を持ったら」「クールワールド」になるみたいな謎のファンタジーをかまされても、一体何がしたいのかわからなすぎるし、またもや「問題解決」のバーデンと責任を若い女性に押し付けている。本当にもうそういうのはいらねえよ。“

https://twitter.com/danielle_takeda/status/1297050766985670658

 

 公共機関のキャンペーンで「萌え絵」等、女性をアニメ表現することの是非は、この間、幾度も論議となっているが、本件の問題点はそれだけにとどまらない。温暖化対策について取材・執筆し続けてきた筆者から言わせてもらえば、君野イマ・ミライによるPRは、そのコンセプト自体がそもそも間違っている。それは、人々がちまちまと省エネするのではなく、石油や石炭等の化石燃料に頼った経済・社会システムごと変えないと温暖化は止められないからだ。そのことは、新型コロナ禍で、よりはっきりしたといえるだろう。感染拡大を防止するため、各国がロックダウンや営業自粛を行ったことにより、今年前半の温室効果ガスであるCO2の排出量は減少、今年4月は、世界全体で前年度比で17%減となった。あれだけ、経済活動が停滞しても、たったの17%減である。しかも、温暖化をくい止めるためには、2050年までに先進国はCO2など温室効果ガス排出を実質ゼロにしなくてはならないのだ。つまり、化石燃料の使用をやめ、太陽光や風力などの自然エネルギーに切り替えていかない限り、人々が多少、省エネに気を使ったとしても、温暖化を食い止めるには全く不十分なのだ。実は、個人の省エネ努力に頼るという「COOL CHOICE」のあり方は、エアコンの温度調整や節水などを呼びかけた「チーム・マイナス6%」(2005年~2009年)の焼き直しに過ぎない。今、必要なのは、個人の省エネ努力よりも、例えば石炭火力発電の規制や自然エネルギーの普及、ガソリン車から電気自動車への移行及びそのためのインフラ整備など、むしろ、国側が本気を出すことなのである。

 

 なお、あえて、個人が賢く選択(COOL CHOICE)することをキャンペーンとして行うというならば、筆者は「パワーシフト」をおすすめしたい。これは、家庭やオフィスで使う電力の購入先を、化石燃料や原発に頼る電力会社から、自然エネルギー中心の電力会社へ切り替えることだ。簡単に行え、大きな負担もなく、CO2排出の少ない電気を使えるようになるし、自然エネルギーに積極的な電力会社を支えることになる。

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パワーシフト http://power-shift.org/

 

 環境省の「COOL CHOICE」は、そのウェブサイトで省エネ住宅やエコカー、省エネ家電への買い替え等はアピールしているものの、パワーシフトについては言及しておらず、石炭火力発電や原発に依存する電力大手やそのバックにいる経産省、そして安倍政権への忖度ではないか、と勘ぐりたくなる。「COOL CHOICE」での「君野イマ・ミライ」の特設ページには、

「果たしてミライは、イマを変えることができるのか。イマは、変わることができるのか」

 というキャッチコピーがあるが、問われているのは、

「果たして環境省は、日本政府を変えることができるか。日本政府は、変わることができるのか」

 ということなのであろう。

#今日のニュース #炎上 #萌えキャラ #温暖化 #環境

(了)

 

 

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