麻生太郎氏 財務省ツイッターより
日本のメディアの問題点として、事実関係の確認や注釈もなしに政治家の発言をそのまま「◯◯はこう述べた」というように報じてしまうところがある。だが、それは時に政治家の事実と異なる主張を、あたかも事実であるかのように、視聴者や読者にミスリードさせることになる。つまり、大手マスコミの報道がフェイクニュース化してしまうのだ。
上述のようなマスコミ報道のフェイクニュース化が顕著であったのは、病院で検診を受けるなど健康不安が噂される安倍晋三首相についての、麻生太郎副総理の発言だ。麻生氏は今月17日、記者団の前で「あなたも147日間休まず、働いてみたことはありますか」と記者に聞き、「ないです」と記者が答えると、「ないだろうね。体調が、147日間休まず連続で働いたら、普通だったら、おかしくなるんじゃないの」と語った。この発言は、各新聞やテレビは報じ、中でも朝日新聞は、麻生氏の発言について"朝日新聞の首相動静によると、1月26日～6月20日の147日間、「公務なし」の休日がなかった"と、わざわざ付け足している。これを読んだ読者のほとんどは、安倍首相が休みなしの過酷な激務を続けたかのように受け取ることだろう。
だが、実際には今年1月26日から6月20日の「147連勤」の内訳を首相動静で確認してみると、土日は１、2時間程度しか公務を行っていない日もかなり多く、最短では30分程度しか公務を行っていない日もあった（本稿の末尾参照）。これを「147日間休まず連続で働いた」というのは、やや無理があるし、世間の感覚とおおきなズレがあるだろう。
政治家の発言をただそのまま垂れ流しに報じることは、メディアを政治家のフェイクを世間に浸透させる拡声器にしてしまう。これに対し、海外メディアは政治家の発言が事実であるか否かのファクトチェックを行っている。例えば、米国のドナルド・トランプ大統領の発言について、ニューヨーク・タイムス紙やワシントン・ポスト紙、大手テレビネットワークCNNなどが徹底的なファクトチェックを行っている。また、イギリスの公共放送局BBCも、同局の番組に出演したボリス・ジョンソン首相の発言について、ファクト・チェックを行っている。
それでなくても、閉鎖的で政治家や官僚と癒着する記者クラブ制度により、日本の大手メディアは信頼を失っている。ファクトチェックや事実関係の注釈もなしの、政治家の発言のタレ流し報道は絶対に改めるべきであろう。
（了）
今年1月26日から6月20日までの首相の公務から2時間以内のものを時事通信「首相動静」より抜粋。
1月26日（日）17時35分～18時5分（30分）
2月8日（土）15時51分～16時47分（56分）
2月9日（日）15時53分～16時31分（38分）
2月22日（土）15時53分～16時43分（50分）
3月1日（日）15時52分～17時51分（1時間59分）
3月8日（日）15時53分～17時36分（1時間43分）
3月29日（日）15時23分～16時49分（1時間26分）
4月5日（日）15時55分～17時33分（1時間38分）
4月11日（土）14時53分～16時40分（1時間47分）
4月12日（日）15時51分～17時33分（1時間42分）
4月18日（土）15時49分～16時44分（55分）
4月19日（日）15時54分～16時44分（50分）
4月25日（土）15時56分～17時3分（1時間7分）
4月26日（日）15時53分～16時29分（36分）
5月2日（土）15時50分～17時38分（1時間8分）
5月9日（土）15時52分～17時47分（1時間55分）
5月10日（日）15時49分～17時21分（1時間32分）
5月16日（土）15時52分～16時36分（44分）
5月17日（日）15時49分～17時15分（1時間26分）
5月23日（土）15時53分～16時41分（48分）
5月30日（土）16時22分～17時27分（１時間5分）
5月31日（日）16時24分～17時11分（47分）
6月6日（土）16時20分～17時10分（50分）
6月7日（日）16時27分～17時21分（54分）
6月13日（土）16時24分～17時6分（42分）
6月20日（土）17時55分～19時5分（１時間10分）
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