「桜を見る会」での政治資金規正法違反の疑いで、東京地検特捜部が安倍晋三前首相の公設第1秘書を立件する方針であることや、安倍前首相本人にも任意の事情聴取を要請したことが、各メディアで報じられている。東京地検がどこまで本気なのかはお手並み拝見といったところではあるが、安倍前首相の秘書の立件は、森友・加計問題や河井夫妻による買収問題にメスをいれるチャンスでもある。
「桜を見る会」をめぐっては、その前日に都内の高級ホテルで行われた夕食会で参加者達に安倍前首相側が参加費の不足分を補填した疑いがある。この補填は、2015~2019年にかけ、毎年900万円ほど行われたとされるが、これを政治資金収支報告書に記載しなかったことが政治資金規正法に反する疑いがあるとして東京地検が捜査を進めているのだ。
上述したように、報道では東京地検特捜部が安倍晋三前首相の公設第1秘書を立件する方針だとのことだ。ともなれば、安倍前首相周辺の文書やメールなどを証拠として確保していくことが考えられるが、この捜査は、安倍前首相の一連の疑惑を解明する絶好のチャンスである。検察のよくやる手法として、ある疑いで、その疑いについて捜査を進めながら、別の疑いについても証拠を確保するというものがある。それは「別件逮捕」、「人質司法」だとして批判されることもあるが、検察が「巨悪は眠らせない」ために使ってきた伝統的な手法だ。安倍政権の下ですっかり牙を抜かれた感がある検察であるが、このチャンスを逃さず、森友・加計問題や河井夫妻による買収問題にも踏み込んで欲しい。
森友問題をめぐっては、国有地売却をめぐる背任容疑で財務省近畿財務局管財部次長や国土交通省大阪航空局職員ら4人、公文書改ざんをめぐる有印公文書変造・同行使容疑などで佐川元局長や近畿財務局管財部長ら6人が市民団体などによって刑事告発されたが、いずれも不起訴となっている。また、安倍前首相の親友である加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園の獣医学部建設で、建設費を水増しして補助金を騙しとったのではないか、と市民団体が刑事告発されたが、こちらも立件されていない。
いまさら聞けない森友・加計問題。グラフィックで分かりやすく解説しています。https://t.co/3zH37ApEyH
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2018年5月24日
さらに、元法相の河井克行被告、その妻で参議院議員の河井案里被告が起訴されている去年の参議院選挙での大規模な買収疑惑においても、両被告が配ってまわった約2900万円の原資や、参院選前に自民党本部から両被告に渡った1億5千万円の使途が裁判の焦点となっている。これらの一連の疑惑について、安倍前首相周辺を徹底的に洗いだせば、必ずや新たな事実が明らかとなるだろう。逆に言えば、今回の千載一遇のチャンスを活かせないのであれば、検察は最早、機能不全に陥っているということだ。検察は「法の番人」として足り得るのか。東京地検特捜部の本気度が問われている。
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