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誹謗中傷はネットの問題か?安田純平さん、帰国から3年の今も被害深刻

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帰国後、会見に臨む安田純平さん(2018年11月 筆者撮影)

  ネット上の誹謗中傷が社会問題となっているが、シリアで拘束された後、解放され帰国ジャーナリストの安田純平さんも、2018年10月25日の帰国から3年になるのに、今なお、悪質な誹謗中傷に悩まされ続けている。

 

 

 安田さんを今もなお苛ませているデマの一つが、彼が「何度も人質になった」というものだ。「私が人質となったのは、シリアでの拘束が初めてです。イラクで地元警察や現地の自警団に職質を受けたり、身柄を拘束されましたが、すぐに解放されました。人質というものは、身代金などの解放のための要求が行われるものですが、シリアの件以外では、そうした要求は行われず、『なんども人質になっている』という主張は明らかに事実と異なります」(安田さん)。筆者も経験があるが、テロ組織構成員やスパイが跋扈する紛争地では、取材中の記者が身元確認のため、一時的に拘束されることはよくあることだ。それをいちいち「人質」だとして誤った認識で批判されたらたまらない。

 問題は、こうした誤った認識で安田さんを誹謗中傷しているのが、匿名のインターネットユーザー達だけではなく、メディアであることだ。例えば、世界日報社の運営する「Viewpoint」は、2018年10月29日に「安田さん解放で『自己責任論』再燃、6回もの人質経験からプロ人質の疑惑浮上」とのコラムを掲載。安田さんは自身のツイッターで「(ツイッター等で安田さんについての)デマを書いた人々の中には、自らの真実性の証明としてこの記事を出してきた者もいる」とコメントしている。Viewpointは、安田さんからの名誉毀損の訴えに和解、今年9月に謝罪文を掲載している。

 

 

 大手メディアも誹謗中傷に加担している。フジテレビ系列『ワイドナショー』では、2018年10月28日の放送で、ゲストコメンテーターの三浦瑠麗氏が、安田さんの解放に関して、「今回の件で総合的に見て、安田さんが現地入りして何が起きたかというと結局のところテロ組織にお金が渡っただけ」と言い切った。だが、番組中でその具体的な根拠は示されず、当時、筆者が行った問い合わせに対しても三浦氏側は回答しなかった。

 ネット上での誹謗中傷が社会問題となっている昨今であるが、安田さんの事例からもわかるように、事実誤認や根拠のない主張で誹謗中傷を煽っているのは、メディアなのである。個々のネットユーザーだけの問題にせず、メディア側は自らの発信こそが誹謗中傷となりうること、また、ネットでの誹謗中傷を煽っていることを自覚し、報道のあり方について、問い直すべきなのだろう。
(了)

 

 

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