志葉玲タイムス

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安倍政権の逆ギレIWC脱退ーなぜ日本の調査捕鯨は批判されるのか、水産庁記者クラブの問題も 

 今日20日付けの共同通信によれば、日本政府は、商業捕鯨の再開に向け、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する方針だという。今年9月のIWC総会で、日本提案の商業捕鯨の再開提案が否決されたことに対する逆恨みなのだろうが、日本の主張が、なぜIWCに受け入れられないのか、自覚するべきだろう。

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 IWCは1982年、クジラの減少を受けて商業目的の捕鯨の一時禁止を決めた。だが、日本が行っている「調査捕鯨」は、その肉が国内市場で流通しているという、実質的な商業捕鯨だ。これに対し、調査であるならば、クジラを殺す必要はないのとのIWC加盟国からの批判が高まっており、国際司法裁判所も2014年に日本の「致命的な調査」を一時的に禁止する判決を下したが、その後も調査捕鯨は継続されている。

 また、昨年11月から今年3月のクロミンククジラの調査捕鯨で、妊娠中のクジラ122頭、幼体のクジラ114頭を捕殺したことも、国際社会からの激しい批判を招いた。

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 また、調査捕鯨の対象とされるイワシクジラの肉の日本での国内市場流通が、絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」に違反するとも、同条約締約国会議でも批判されている。ワシントン条約では、公海で漁獲・捕獲した絶滅危惧種やその身体の一部などを、どこかの国に持ち込むことを規制の対象としているからだ。
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 このように、国際法やIWCの勧告を軽視している、という批判を無視して、調査捕鯨を行ってきた日本政府が、商業捕鯨の再開を求めても賛同を得られるわけがないのは、当たり前のことだ。だが、日本政府は商業捕鯨再開がIWCに否決されたことに逆ギレして、IWCを脱退しようとしているのだ。

 ただ、こと捕鯨に関しての日本の報道には、水産庁の主張をそのまま垂れ流しにしたものが少なくない。捕鯨問題についての国内報道は、水産庁記者クラブによる記事が多いためだろうが、日本の調査捕鯨がなぜ世界から批判されているのか、調査捕鯨自体が水産庁の利権化していることなどの視点を欠いている。日本の報道関係者も、水産庁べったりではなく、より客観的な視点からの取材が必要なのではないか。

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