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菅首相に「倍返し」!任命拒否された法学者が「法律知らぬ素人」と批判―日本学術会議人事介入

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 2日に行われた官邸前抗議 筆者撮影

 「学者の国会」と呼ばれる日本学術会議の推薦する会員任命の一部を菅政権が拒否した問題で、今月2日、首相官邸前で学者や学生ら約300人(主催者発表)が抗議を行った。抗議活動には、任命されなかった6人のうちの一人、岡田正則・早稲田大学教授も参加。自身の専門である行政法の見地から菅政権の対応を厳しく批判、「倍返し」した。

 

  日本学術会議は、日本の科学者・研究者の内外に対する代表機関であり、政府に対し科学的見地からの答申・勧告を行う。会員を任命するのは総理大臣だが、独立性は保障されている。しかし、今回は安保法制や秘密保護法に反対した学者6人の任命を菅義偉首相が拒否する事態となった。

 

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岡田正則教授 筆者撮影

 2日の官邸前抗議では当事者である岡田教授もマイクを握り、任命拒否の法的な問題を指摘した。

 「総理が任命するのもしないも自由、そんなことは絶対ありえない。日本学術会議法の第1条に、内閣総理大臣の所轄とあります。所轄とは、監督権があることではない。事務をやらせていただく、ということ。所轄だから監督権があるというのは法律を全く知らない素人の発想」

「日本学術会議法第25、26条では、日本学術会議の会員は総理あっても、会議からの申し出をなしには退職させることはできない。普通の人事権とは全く違うのです」

「日本国憲法第6条で天皇が内閣総理大臣を任命するとあるが、だからと言って天皇がちょっとパス、違う人出してと、菅さんを任命拒否するかというと違うわけですね。それと同じこと」(岡田教授)。

 

 

  岡田教授ら6人に対する任命拒否について、菅首相も加藤勝信官房長官も「俯瞰的、総合的に判断した」と煙に巻くだけで具体的な法的根拠を示せていない。岡田教授は「行政法では、理由を示せない行政処分はない。理由を説明できないなら処分してはいけないのです」と強調する*。

  理由を示さない任命拒否は憲法違反の疑いがある。実際、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」とする憲法第31条の対象は刑事罰だけでなく、行政処分も含まれるとの判例があるからだ。

 

  官邸前抗議を呼びかけた小原隆治・早稲田大学教授(政治学)は「(菅政権のやりかたは)法治主義を壊す、多数を握っているなら何をやってもいいんだという考え方。学問の自由の危機というだけでなく、もっと大きな自由民主主義そのもの危機」と訴えたが、正にその通りであろう。

  菅政権による任命拒否に対しては、その後も各界からも次々に批判の声があがり、インターネット署名サイト「Change.org」での任命拒否撤回を求める署名は既に10万筆以上を集めている。

www.change.org

 

 記者クラブメディアを集めての「パンケーキ懇」等、マスコミを懐柔して支持率を稼ごうとしている菅首相だが、早くもボロが出たかたちだ。菅政権や擁護派は日本学術会議に対するフェイクを交えたネガティブキャンペーンを行っているが、問題は今回の任命拒否がしっかりとした法的根拠があるか否か、である。その核心から論点をすり替える論議は、既に菅政権のやり方がおかしいことを自ら認めているようなもの。むしろ、そうした不誠実さが火に油を注ぐことになるだろう。

(了)

 

 

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