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伊勢谷友介の「被害者なき犯罪」の大麻より、加藤官房長官・二階幹事長の「被害者1万人の巨額詐欺への加担」を追及せよ

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ジャパンライフの宣伝に加藤官房長官


 今月8日に大麻取締法違反の疑いで逮捕された俳優の伊勢谷友介氏。大麻で捕まった芸能人の例に漏れず、メディアの論調は伊勢谷氏に厳しく、正に袋叩き状態になっている。筆者としても、伊勢谷氏をかばうつもりは毛頭ないが、大麻を自身で利用すること自体は「被害者なき犯罪」として、処罰の対象にすべきなのかについては論議があるところだ。この「被害者なき犯罪」については、批判的な意見もあるが、その様な文脈において言うならば、むしろ、詐欺容疑で元会長らが逮捕されたジャパンライフと菅政権の面々の関係こそ、厳しく糾弾されるべきではないだろうか。

 

 

 

 昨今、大麻で逮捕された芸能人が受ける社会的制裁は非常に厳しいものがある。出演のドラマや映画、その他の番組から降板され、事務所から契約解除され、CMの放送中止等で莫大な額の賠償金を支払わされる。これらは当然、大麻取締法に基づく刑事罰ではなく、いわば業界の慣習的なものだ。ただ、上述したように、大麻やその他の麻薬を自身で利用することについては、「被害者なき犯罪」として処罰するべきではないという考え方もある。つまり、大麻や麻薬をある人物が利用すること自体は、他人に直接的な被害を与える行為ではなく、法的侵害を受ける被害者がいない=刑法で処罰すべきなのか否か、という議論である*。

*もっとも、大麻取締法では、自己利用以前に、所持していること自体が刑罰の対象となるのではあるが。

 こうした「被害者なき犯罪」の視点から、伊勢谷氏を擁護し、行き過ぎたバッシングや社会的制裁を危惧する声も一部あるようだが、一方で、違法薬物等の利用は「被害者なき犯罪」ではない、という主張もある。曰く、こうした違法薬物は、反社会的勢力の資金源となり、そうした反社組織による犯罪の被害者を増やすことにつながる、というものだ。

 

 

 犯罪集団の資金稼ぎに加担することが、刑法による処罰や社会的制裁を肯定するというのであれば、伊勢谷氏よりも、もっと糾弾されるべき者達がいる。それは菅政権の閣僚を含む自民党の政治家達だ。彼らは、空前の規模の巨額詐欺事件を起こした企業「ジャパンライフ」の悪質さを知りながら接近し、それにより、多くの被害者を生むことになったからである。ジャパンライフは、「磁気治療器のオーナーになれば配当金が得られる」と全国の約1万人から2,000億円以上を集めた企業。警視庁は今月18日、顧客に嘘の説明をして金をだまし取ったとして、元同社会長の山口隆祥容疑者ら14人を詐欺容疑で逮捕した。

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 実は、ジャパンライフは、2016年12月の時点で既に、業務停止命令を受けていたが、それにもかかわらず、2017年1月、当時、一億総活躍担当大臣で現・官房長官の加藤勝信氏が、山口元会長と会食していたのである。このことは、平成30年1月30日衆議院予算委員会での、大西健介衆院議員の追及で加藤氏自身も認めている。

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ジャパンライフの宣伝に二階氏やメディア幹部も登場

大西議員の質疑によれば、同じく2017年1月、「二階俊博自民党幹事長を囲む懇親会」が山口元会長の主催で行われたとのこと。そして、ジャパンライフは、山口元会長が加藤・二階両氏と会ったことを、その販促アピールに活用していたのである。これによって「大物政治家達が応援しているから」と、騙され大金を奪われた人々がいたのだ。

 

 

 news.yahoo.co.jp

  「犯罪組織に加担し、被害者を増やすこと」という点においては、伊勢谷氏の大麻所持よりも、加藤・二階両氏のジャパンライフへの「販促協力」の方がはるかに深刻だと言えるだろう。芸能人は大麻所持で、業界から干され、巨額の賠償金を支払うことになる等、社会的な制裁を受けるのに、政治家は何ら制裁らしき制裁を受けないということでは、いかにもバランスが悪い。少なくとも、加藤・二階両氏は自らがジャパンライフとどの様な関係にあったのか、金銭の授受があったどうかも含め真摯に説明すべきであるし、その関係性いかんによっては、役職を辞任、或いは議員辞職すべきではないのか。メディアも、芸能人の大麻関連で騒ぐ以上に、ジャパンライフに加担した政治家達への追及を徹底的に行うべきだろう。

(了)

追記:ジャパンライフには複数のメディア関係者らの加担も明らかとなっている。この者達の責任追及もあわせて必要であろう。

 

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