新型コロナウイルスの感染が拡大する中、マスクや消毒液が供給不足が深刻な状況となっている。一般の消費者による需要の高まりだけでなく、転売目的で大量に買い占め、オークションサイトで適正価格の数倍以上で売りつける悪質業者や個人、いわゆる「転売ヤー」達が跋扈しているからだ。そのため、医療/介護関係など、本当にマスク・消毒液が必要とされる場でも、供給不足に悩まされている状況だ。これに対し、経産省がようやく重い腰をあげた。ネットオークション事業者にマスク・消毒薬の出品自粛を働きかけ、今月14日以降は、原則、少量・適正価格での通常販売のみとすることを要請したのだ。
経産省によれば、ネットオークション事業者に協力を求め、今月14日以降の当分の間、マスク及び消毒液の出品の自粛を要請するという。つまり、「オークションサイトでは14日までに売らなくてはいけなくなるため、転売目的で買い占めを防ぎ、既に買いだめされているマスクや消毒液を市場に放出させることが狙い」(経産省)というわけだ。さらに今月14日以降は「(従来市場での主要製品の流通価格を提示する等)適正な価格水準を示しつつ、小ロットの商品のみの出品が可能になるよう販売事業者に要請する」(経産省)とのこと。つまり、大量のマスクや消毒液を法外な値段で売りつけることは事実上できなくなる。
深刻なマスク・消毒薬不足を受けての政府の対応だが、後手にまわった感は否めない。1970年代のオイルショックでは、トイレットペーパー不足が社会問題化したため、生活関連物資緊急措置法により買い占めや売り惜しみの取締りが行われた。だが、今回は1月の時点で既にマスクが不足していたにもかかわらず、先月21日、安倍政権は「(生活関連物資緊急措置法の対象として)現段階ではマスクを指定する状況ではない」と閣議決定している。それから一転して、今日3日、政府は、国民生活安定緊急措置法に基づきマスクの売渡しをメーカー等に指示。北海道へ8万世帯分320万枚のマスクを供給するとしている。
マスク・消毒液のみならず、トイレットペーパーも各地で買い占めが行われ、転売が行われている。輸入が7割のマスクと異なり、トイレットペーパーは「ほぼすべてが国産品で在庫は十分」と、梶山経産大臣が呼びかけている。だが、買い占めのためにコンビニやスーパー、ホームセンター等ではトイレットペーパーが品切れ状態で、都内の店舗で聞くと「入荷の予定は全くない。店員のトイレで使う分すらない」という。マスク等と同じで在庫放出や増産を行っても買い占められてしまえば、一般の店舗で買うことはできなくなってしまうのだ。トイレットペーパーに関しても、「オークションへの出品の自粛」をネットオークション事業者に強く求めていくことが必要だろう。
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