「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、ダウンタウンの松本人志氏が、HKT48の指原莉乃さんに対し「お得意の体を使って何とかすれば」とセクハラ発言をして批判を呼んでいる(下記リンク参照)。
そうした中、国際政治学者の三浦瑠麗氏は、ブログで松本氏を擁護した。
日本における「女性問題」炎上を読み解く三つのポイント - 山猫日記
「ワイドナショーの松本さん発言については、仲の良い親分肌の指原さんが刺し返してくることを織り込んだうえで下品な笑いを取りに行き、自らを自嘲的な笑いに持ち込むというのが彼の考えた筋書きだったと思います」
何時から三浦氏はお笑い評論家になったのだろうか。そもそも、問題の発言が飛び出したのは、NGT48山口真帆さん暴行事件について、指原さんがコメントしていた時。女性への暴力、或いは性的暴行未遂だったかもしれない事件について、真面目に指原さんがコメントしている時に、松本氏の「体を使って~」というセクハラ発言は、不謹慎だし、全く笑えない。
松本氏も、それを擁護する三浦氏も、時事問題のコメンテーターとしては、最悪だ。シリアで拘束/解放されたジャーナリストの安田純平さんについての両氏のコメントも酷いものだった。それらのコメントを批判したYahoo!配信記事の中でも指摘したが、時事問題を語るのであれば、相応の知識や経験、そしてジャーナリズムというものに対する気構えを身につけてから語るべきではないのか。
以下、Yahoo!配信の記事より。
安田純平さん叩くタレント達に戦場ジャーナリストが物申す-橋下氏、たけし氏、松本氏、三浦氏へ(志葉玲) - 個人 - Yahoo!ニュース
〇過去の具体的な事例からの配慮を
「安田さんと個人的に道であったら、ちょっと文句は言いたいですね」
と発言したのは、タレントの松本人志氏(『ワイドナショー』フジテレビ系、先月28日)。メディアでの露出が多く影響力のある人物がこうした発言をするのも、危険なことだ。2004年4月、イラクで人質とされた日本人3人は帰国後、「文句を言いたい」人々による凄まじいバッシングで、家から一歩も出られなくなる事態に陥った。人質とされた一人である今井紀明さんは、当時、背後から突然殴られたり、兄が事件の影響で失業したりしたという(関連情報)。タレントとは言え、ワイドショーで時事問題について発言する立場にある松本氏には、自らの発言が安田さんやその家族への危害を助長することがないよう、過去の事例も踏まえて慎重な物言いをしてもらいたい。
また松本氏は上述の放送で
「わざと人質になって身代金を折半しようやって奴が出てこないとも限らない」
と発言したが、まともなジャーナリストであれば、わざと人質になるという、あまりに危険かつ職業倫理的にも問題ある行為をしようなどとは、その発想すら出てこないだろう。安田さんが自由となるまで、虐待も受けながら3年4カ月も耐えざるを得なかったこと、また安田さんが拘束されていた地域でシリア政府軍やロシア軍が猛空爆を行っていたことを、松本氏には是非考慮していただきたい。
〇拙速な決めつけは控えるべき
国際政治学者という肩書を持ちながら、度々その言説が物議をかもしている三浦瑠麗氏は、安田さんについての発言も粗雑なものだった。三浦氏は『ワイドナショー』(フジテレビ系、先月28日)で
「今回の件で総合的に見て、安田さんが現地入りして何が起きたかというと結局のところテロ組織にお金が渡った」
と断言。安田さんから有益な情報は得られないとの見方を示した。だが、既に本稿で述べたように、まず安田さんの拘束経験や関連する事実関係自体が、他の紛争地で取材する報道各社及びフリーの記者にとって、具体的な教訓として、非常に有益である。また、安田さんがまだその経験の全てを語っていない中で、「有益な情報はない」と決めつけるのは、拙速であろう。
さらに、一部報道にあるような、安田さんの身代金をカタールが支払ったかも定かではなく、証拠も何もない。安田さんの解放当時、彼が拘束されていたシリア北部イドリブ県では、同地域へのシリア政府軍の総攻撃を回避するため、非武装地帯をつくることで、シリア政府側を支援するロシアと、反政府勢力側に影響力を持つトルコが合意。これに伴い、非武装地帯とされた地域から、反政府武装勢力が撤退を開始し始めた。このことが、安田さんの解放につながった可能性もある。それは、今後の安田さん自身の説明などからも検証すべきことで、現時点で「テロ組織にお金が渡った」と断定することは、あまりに乱暴な決めつけである。
〇タレントも相応の知識や経験が必要
アンジェリーナ・ジョリー特使、ヨルダンのシリア難民キャンプを訪問
日本では、憲法で「言論の自由」が保障されている。著しく事実と異なる誹謗中傷でない限り、様々な議論があることは当然であろう。ただ、専門知識や経験、人権への配慮を欠いたタレント達がワイドショーなどで放言し、それをタブロイド紙やネットメディアが拡散するという、現在の日本の言論の在り方には、やはり疑問を持たざるを得ない。海外では、例えば俳優のジョージ・クルーニー氏や、女優のアンジェリーナ・ジョリー氏などは国連大使として素晴らしい演説を行い、難民キャンプなどの現場も訪れている。日本のタレント達も時事問題を語るのであれば、相応の知識や経験を身につけていくべきではないか。
(了)